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気配り

 夜10時。出張先での仕事が遅くまでかかり、ホテルでチェックインを済ませた。遅めの夕食をと、一人ホテルを出た。最初にたどり着いたレストランはラストオーダーが10時ということで断念。エレベーターでそのビルの3階に行くとイタリアンレストランらしきエントランスがあり、看板によればラストオーダーまで30分近く時間あった。

 腹がへっていたが、まずはビール。バランスよくクリーミーな泡が立った小さめのジョッキが運ばれてきた。続いて、なにやらカタカナで書かれたわけのわからない前菜とトマトソースのスパゲティーをオーダーした。予想どおりあっという間にビールジョッキは空になった。次はワイン。トスカーナの重そうなものをグラスで頼んだ。

 ここで問題が発生した。前菜とスパゲティーを食べたのだが、酒の勢いもあり、もう少々腹に入れたくなった。メニューを見ると、うまそうなピザがあった。しかし、写真を見ると直径が30センチほどありそうだ。夜も遅い。スパゲティーの後にこのピザを一人で食べるのは困難だとあきらめた。

 そして5分後。トスカーナを飲んでいると、あきらめたはずのピザが無性に食べたくなった。「すみません、ちょっと」とウエイターを呼び止めた。先ほどの若い男性とは別の少し年配(40歳ほどか)の男性で、胸の名札に「店長」と書かれていた。「このピザ、一つお願いします」そして私は彼の対応に驚かされた。

 「こちらのピザでございますね・・・。もしよろしければ、特別に小さ目に焼きましょうか」と、ささやくように私にきいてきた。


 まるで、私の腹の中を透かして見たかような対応。しかも、メニューにはない特別なサイズの提案。

 運ばれてきたピザはなるほど小さ目で、食後に一人でつまむにはちょうどよいサイズのものだった。一人で寂しく食事をしていたが、なんだかとっても幸せな気分になった。すると今度は、ワイングラスに注がれていたトスカーナが底をついた。先ほどのすばらしい対応のお礼をと、もっと飲むための理由を勝手に考えて、グラスワインをもう一杯注文した。

 先ほどの店長が、落ち着いた笑顔とともにトスカーナのボトルを携えて近づいてきた。「ピザはちょうどいい大きさでした。ありがとうございました」と私は礼を言った。彼は「それはよかったです」とにこやかに応えながら、ワインをグラスに注ぎ始めた。

 トッ、トッ、トッ、トッ・・・。おっと。店長は、大き目のワイングラスに並々とトスカーナを満たしてくれた。(1杯目のグラスワインは、ワイングラスの半分弱の量だったのに)店長はいたずらっ子のような目で言った。「すみません、入れすぎてしまいました」

 またしてもやられた。私が酒飲みでしかも赤ワインが大好きだということを、見事に見透かされてしまった。私が目で礼を伝えると、さりげない笑顔で厨房にもどって行った。ピザをつまみに、疲れた体にトスカーナを流し込んだ。ワインの赤い液体が五臓六腑に染みわたった。(水道橋にて 小島 正晴)
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